『X-ファイル』のシーズン11は全6話のミニシリーズ。シーズン10として約14年ぶりに復活したドラマの続編にして「Xファイル」の最終版。
あらすじと感想をざっくりと書き記します。ネタバレありなのでご注意ください。
Xファイル シーズン11/全エピソード
エピソード1:My Struggle Ⅲ(闘争 Part.3)
冒頭からシガレット・スモーキング・マン(ウィリアム・B・デイビス)の回顧録が始まり、その中で彼のフルネームが登場。カール・ゲルハルト・ブッシュ。
ダナ・スカリーは発作を起こした後、病院で目を覚ます。「マイ・ストラグル2」の出来事は彼女の脳が作りだした幻覚であり、実際には起こっていないことだった。しかし彼女の脳をリアルタイム検査したところ、脳の各部位がシグナルのように点滅している。ウォルター・スキナー(ミッチ・ピレッジ)はそれがモールス信号であることに気づき、「彼を探せ」と訴えていることがわかった。
やがて意識を取り戻したスカリーは、フォックス・モルダーに自分が見たリアルな幻影について話し始める。幻影の中ではスパルタウイルスが蔓延しており、免疫不全のため人々が次々と死に至る。モルダーも瀕死状態になっており、命を救うには自分たちの息子であるウイリアムの幹細胞が必要。そしてそれらの最悪的状況を引き起こした黒幕こそが、死んだと思われていたスモーキング・マンである・・・。
最初のうちモルダーはスカリーのとりとめのない話は病気のせいだと考えたが、調査のために病院を離れる。
一方、ジェフリー・スペンダーは地下駐車場で車に追いかけられる。スペンダーは「209」と書かれたアパートのドアの後ろに隠れ、敵の男がウイリアムの居場所を問い詰める。スペンダーはモルダーに電話をかけて「誰かがウイリアムを探している。気をつけろ」と忠告するが、スモーキング・マンが電話を傍受しており、手下のモニカ・レイエスに「モルダーが来る」と注意を促す。モルダーの車は尾行されたが、長い時間カーチェイスを繰り広げた末に追っ手をまく。
その後、スペンダーがスカリーのベッドサイドに現れ、何者かがウィリアムを探していることを明かす。彼はスカリーの息子の居場所は明かさず、養子先の家族の名前”ヴァン・デ・カンプ”だけを明かす。モルダーはスモーキング・マンのもとへ向かうと思われる手下を尾行したが、その行先であるスモーキング・マンの隠れ家にいたのは、残念ながらスモーキング・マンの敵対勢力である謎の男ミスター・Y (A.C. ピーターソン) とエリカ・プライス (バーバラ・ハーシー) だった。彼らは元シンジケートの一員だが、宇宙の植民地化に関する独自の計画があると話す。2人はモルダーに、スモーキング・マンが必死に探しているウイリアムを自分たちに引き渡すよう交渉してきたが、彼らに不信感しか抱いていないモルダーはそれを拒否する。
一方スカリーは独自捜査のため強引に病院を抜け出す。スキナーはスカリーを探すが見つからず、車に向かったところでスモーキングマンとモニカに遭遇。モニカに銃で脅されながら、スキナーは車内でスモーキングマンから「スパルタンウイルスへの免疫と引き換えに全人類を淘汰する計画に協力してほしい」と要求されて大いに悩む。
一方、スカリーは病院を出て車を走らせていたが、発作が再発して車を衝突させてしまう。彼女はアインシュタイン捜査官とミラー捜査官に救出され、再び入院する。2人の捜査官は部屋から出たところを狙ってミスターYとエリカが送り込んだ暗殺者が入室しスカリーを窒息させようとするが、かろうじてモルダーが駆け付け、暗殺者を殺害してスカリーを救う。
モルダーが暗殺者を殺した後、スカリーはスモーキングマンが彼を送ったとは思わないと言う。そして、彼女は自分の幻覚はウィリアムが彼の超能力で送ってきたものだと明かす。スキナーが入ってくると、モルダーはスキナーから煙の臭いがしたため彼に詰め寄る。スキナーはスモーキングマンと車内にいたときに、スカリーを人工的に妊娠させたのはモルダーではなくスモーキングマンであり、彼こそがウイリアムの父親であることを明かされていた。
その頃、ウィリアムと思われる青年がどこかの場所で発作を起こして苦しんでいた。
エピソード2:This(死後)
スカリーとモルダーがモルダーの自宅で眠っていると、突然モルダーの携帯電話が起動する。画面には今は亡きローン・ガンメンのメンバーで、モルダーの長年の友人であるリチャード・ラングリー(ディーン・ハグランド) の歪んだ顔映像が表示される。突然の出現にモルダーたちは驚く。しかしそこに3人の武装した男たちが急襲し銃撃戦が勃発。武装した3人のうち2人が死亡し、最後の1人が逃走したが、さらに第二陣の武装グループが到着する。
スカリーはウォルター・スキナー (ミッチ・ピレッジ) に助けを求め、スキナーは彼らに「今はどうすることもできないからおとなしく降伏するように」と告げる。スカリーとモルダーはその指示を無視し、いったんは武装グループに手錠をかけられるがなんとか強引に逃げ出す。二人は森の中を逃げているところでスキナーに発見される。スキナーは襲撃者たちはロシアとつながりのあるペルルというグループだと説明。モルダーたちの逃走を手助けする。
スカリーとモルダーはアーリントン墓地へ行き、ローン・ガンマンの墓石を見つける。その墓は生年月日と死亡日はでたらめで、しかもラングリーの墓石は変な方向を向いていることに気づく。怪しく複雑なパズルを解いた後、彼らはディープ・スロート(内部告発者)の墓石にたどり着き、その名がロナルド・パクラであることを知る。スカリーとモルダーは彼の墓石に隠されていたQRコード入りのチップを発見。そこへロシア人の襲撃者が銃撃して来るが、モルダーが猛然とタックルして倒す。
モルダーとスカリーはQRコードをスキャンして、ニューヨーク市のロング ラインズ ビルの画像を見つける。そこはNSA のプログラム「タイタンポイント」とコードネーム「ブラーニー」の本拠地であった。モルダーとスカリーはスキナーに会い、彼からオンラインで X ファイルへのアクセス権を与えられる。また彼らは、ラングリーに関するファイルがハッキングされ削除されていたことも知る。彼らは他の銃撃者のフォルダーの中にあるファイルを見つけ、カレン ・ハンビーにたどり着く。カレンは彼女とラングリーの意識データを、彼らが死んだときに生き返るシミュレーションにアップロードしたと説明する。ハンビーはラングリーからの動画映像について、ラングリーの仮想意識がシミュレーション世界からメッセージを送ってきたものだと説明する。ハンビーがシミュレーション内でラングリーの意識とコンタクトをとる具体方法を説明し終わる前に、彼女はロシア人の襲撃者に撃たれて死亡。その襲撃者はスカリーに撃たれて死亡する。
モルダーはハンビーのアルゴリズムを使ってラングリーとコミュニケーションをとることに成功。ラングリーはバーチャルな天国の恐ろしさを痛烈に伝える。ラングリーのいる世界では、一日中ホットドッグとドーナツが食べ放題で、ラモーンズは毎晩演奏していて喧嘩はせず、ニューイングランド・ペイトリオッツはいつも負ける。しかしラングリーは、バーチャルリアリティの世界にいる偉大な頭脳をもつ人々はデジタル奴隷のようなものだから君たちの手で終わらせてほしいと告げる。
モルダーとスカリーはロングラインズ・ビルに入る。階段を上る途中で襲われるが、スカリーは逃げる。モルダーはエリカ・プライス(バーバラ・ハーシー) のいる部屋に連れて行かれ、彼女がシミュレーションを考案した責任者であることが明かされる。エリカはスマートフォンを使って人の意識を痛みなくコピーできると説明し、モルダーに世界の見方を変えるよう助言する。
スカリーと一緒にアップロードできるかどうか考えた後、モルダーは逃げる。一方スカリーはサーバーを保護するガラスの障壁を突き破り、シミュレーションをオフにする。彼女はモルダーと再会し、2人は施設を脱出。その後FBIエージェントたちを伴って再び施設へ戻るが、オフィスは空っぽでサーバールームはもぬけの殻ですべては跡形もなく隠蔽されていた。
エピソードの最後には、ラングリーが再びモルダーに連絡をしてきて「バックアップも破壊しろ」と訴えてくる。しかしその場所を明かす前にラングリーは、今や仮想天国の住人となったロシア人襲撃者に襲われる。
※ディープ・スロート(内部告発者)のロナルド・パクラの本名は初出。シーズン4のエピソード7でスモーキングマンの回想シーン内に”ロナルド”という名前は登場している。なお、”パクラ”という苗字は『Xファイル』制作に影響を与えたと言われている映画『パララックス・ビュー』『大統領の陰謀』を撮ったアラン・J・パクラ監督に由来する。
※モルダーとラングリーの誕生日である10月13日は、『Xファイル』シリーズの制作者クリス・カーターの誕生日。
エピソード3:Plus One(分身)
バージニア州の小さな田舎町のイベントパーティーで、アーキー・シーバーズは群衆の後ろに自分自身の姿を見る。彼はイベント会場から車で逃げ出すが、彼のドッペルゲンガーがハンドルを握り、彼を木に突っ込ませる。
モルダーはアーキーの事件を知り、ドッペルゲンガーを見たと主張して自殺を図ったいくつかの事件と比較する。スカリーはアーキーが嘘をついていると考えるが、モルダーは半分信じている。モルダーたちは生きのびたシーバーズと会い、昨夜の出来事について話し合う。
モルダーとスカリーは精神病院で解離性同一性障害の患者、ジュディ・パウンドストーン (カリン・コノヴァル) と会う。彼女の部屋にはハングマンゲーム(絞首刑ゲーム)がいっぱいで、彼女は町の反対側に住む兄で偏執狂の隠遁者チャッキーとそれをやっていると主張する。
独房に入れられた後、アーキーのドッペルゲンガーが彼と一緒に独房に現れ、おそらく彼を殺した。モルダーとスカリーはセント・レイチェル・モーテルにチェックインしてその夜を過ごす。彼は真夜中にスカリーのところに来て、アーキーの死を告げる。スカリーは自殺だと主張するが、モルダーと弁護士のディーン・キャバリエはそうは思わない。
モルダーは、ジュディと似たような環境で一人暮らしをしている気難しいチャッキー (コノヴァル) を見つける。彼の家にはハングマンゲームの絵がいっぱい。一方スカリーはジュディスの別人格「悪魔のジュディ」と会う。悪魔のジュディは独房のドアに「ドゥーキー!」ブランドのチョコレート プディングを投げつけているようだ。看護師の 1 人が、パウンドストーン家の両親は首を吊ったと教えてくれる。スカリーはジュディからさらに情報を得ようとするが、この新たな敵に苦しめられる。
チャッキーとジュディは再びゲームを始めたが、今度はディーン・キャバリアーをターゲットにしていた。まずディーンは自分のドッペルゲンガーを見つけ、スカリーとモルダーに報告しに行く。捜査官たちはディーンに、落ち着いて、危害を加える武器をすべて隠すように言う。ディーンは家へ行き、山ほどある武器類を家の屋外に運んで捨てる。部屋の壁がコレクションの日本刀でいっぱいなので、急いで抱えて持ち出そうとした時にディーンは誤って自分の腕を傷つけてしまう。傷を治す前に、再びドッペルゲンガーを目撃する。捜査官たちが到着すると、首を切られたキャバリアーがいた。
モーテルに戻ると、モルダーはバスルームに自分の分身がいるのを見てパニックになる。スカリーがジュディを止めに行く中、モルダーはチャッキーと対決しようと急ぐ。病院へ向かう途中、スカリーは車の後部座席に自分の分身がいるのを見るが、平静を保ってその姿を「顕在化した観念」「潜在的な敵意の産物」と呼ぶ。
チャッキーの家に入ったモルダーは、自分のドッペルゲンガーと取っ組み合いになる。
ジュディとチャッキーはモルダーとスカリーのどちらを絞首刑にするか決めかねて、互いに争っている。二人の争いはエスカレートし、最終的に兄妹はお互いの名前をハングマンゲームの紙に書いてしまう。
兄妹は互いに「絞首刑」にしてしまい、モルダーがチャッキーを見つけた時にはすでにこと切れていた。モルダーはチャッキーの部屋の壁に、「ママ」「パパ」と書かれた2枚のゲームの跡を見つける。
エピソード4:The Lost Art of Forehead Sweat(失われた記憶)
ビッグフット探しから帰ってきてスカリーと電話で話をした後、モルダーは窓につけられた秘密の合図に気づく。秘密裏に会うという意味の合図で、長いこと使っていなかった。駐車場に出向いたモルダーは、昔からモルダーのことを知っているというレジーという男に会う。
レジーは「やつら(They)」が自分を社会から消し去ろうとしていると話し、モルダーも記憶を消されていると主張する。その証拠に、モルダーが子供の頃に初めて見たトワイライトゾーンのエピソードは『消えた火星人』だな、と言い出す。モルダーが「そうだ」と答えると男はさらに「あのエピソードは存在しない。昔から。」と言う。男はその後姿を消す。
家でビデオテープの山をひっくり返して『消えた火星人』の回の録画を探すモルダー。「あの傑作回がいくら探してもない。ネットにも情報がない。」と嘆く。「ただのドラマでしょ」とあきれるスカリーに「特別な思い入れがあるんだ」と熱く語るモルダー。
後にスカリーのところへもレジーが現れ、彼女が子供の頃に食べたのを覚えている”ABCゼリーミックス チェリー味”の箱を彼女に渡して「私の指紋がついている。これで私を探してくれ」という。そしてあっという間に姿を消す。
スカリーはモルダーに「このゼリーは母の思い出がいっぱい。何十年も探していたのに、誰もABCゼリーを知らなかった。”123ゼリーならある”と。」と話す。
モルダーとスカリー、そして最終的にはレジーは集まって話し合う。自分が他人と異なる記憶を持つこれらの出来事がマンデラ効果の例だというモルダーに対して、それはメンゲレ効果だとレジーが言う。
レジーの話を信じないモルダーは「やつら(They)」の正体を言ってみろ、とレジーに迫る。するとレジーはTheyはゼイ博士のことだと言う。2人は陰謀の黒幕が、集合記憶の操作方法を発見した神経科学者のサディアス・Q・ゼイ博士であることを初めて知る。
モルダーとスカリーは、レジ―がかつてXファイルチームのメンバーであり、モルダーと一緒にXファイルチームに取り組み始め、1993年にダナ・スカリー博士が地下室のオフィスに来た日にそこにいたことを突然思い出し、ショックを受ける。過去の事件を一通り振り返った後(思い返せばレジ―は『Xファイル』シリーズの多くの印象的な瞬間を2人とともに経験している)、3人はレジ―が「やつら(They)」と呼んでいるのは、
ゼイ博士はモルダーと戸外で会い、「罪を隠蔽する時代は終わった。信じたいものを信じればいい。今はみんながそうしている」と、いくぶん陽気に説明する。ゼイ博士はさらにモルダーに「お前は死んだ」と言い、Xファイルと陰謀を追う理由がもうなくなったという意味だと言ってにやりと笑う。
後日、レジーは長年政府職員として勤務し、精神病棟の患者となったレジー・マーガトロイドという人物であることが明らかになった。X-ファイル以外にも攻撃ドローンのパイロット(誤爆)、テロリストへの拷問(水責め)、IRSの書類処理(手書き)、詐欺調査官(勤務中に寝過ごす)など、さまざまな経歴を持つ。そして最後は神経をやられた。
病院に連れ戻されることになったレジーにモルダーは「我々の最後の事件で何があった?」と尋ねる。
最後の事件の回想。3人は一緒に、X-ファイル課最後の事件となる”エイリアンとの遭遇”に挑んだ。宇宙船で飛来した”銀河間連合全生命体の代表”であるグラナダ星人は「長年観察した結果、人類との接触は望まない」と切り出し、人類の接近を防ぐべく太陽系外の宇宙に電磁壁を建設すると言う。エイリアンはさらに「天王星より先は探索するな。君たちの使者はお断りだ。ドラッグや犯罪者を持ち込む強姦魔に違いないから。」と淡々と話し続け、「他の惑星にない地球人の恐ろしい性質は、嘘をつくことだ」とまとめる。
エイリアンはモルダーに「すべての疑問の答え」が書かれた本を渡し、あまり愛想よくない別れとさよならを願う。モルダーは、もう答えを探す必要がないという考えに取り乱しているようで、子供のような癇癪を起こす。レジーとスカリーが抱いて慰める。
レジーは”スポトニッツ療養所”と書かれた車に乗せられていく。ちょうどそこへ来たスキナーが「レジーをどこへ連れて行くんだ?」と2人に尋ね、モルダーとスカリーは驚いて顔を見合わせる。
モルダーは自宅で『消えた火星人』を見ている。モルダーは「トワイライトゾーンじゃなくて二番煎じの他の番組だった」という。スカリーがビッグフットの足型で作ったABCゼリーを食べ始めようとしてやめる。そして「思い出のままにしておくわ。何もかもね。」と言う。
※スポトニッツ療養所という名称は、『Xファイル』シリーズで長年にわたりプロデューサー・脚本・製作総指揮などを務めたフランク・スポトニッツに由来する。
エピソード5:Ghouli(グーリー)
10代の2人の少女、サラ ターナー (マデリン アーサー) とブリアナ ステイプルトン (サラ ジェフリー) は、とある深夜、錆びて放棄された「キメラ」という船にそれぞれ単独で乗り込み、艦内を偵察する。2 人はそれぞれが歩き回る足音を聞き、お互いを都市伝説の怪物「グーリー」だと思い込む。ブルネットの髪の少女は緊張に耐えられず、デッキを走り出す。そして腐った木のデッキが崩れ、下階のブリッジの中に落ちる。そこにいた恐怖に怯えたブロンドの髪の少女が叫び声をあげながらナイフを振り回す。2人はお互いをグーリーと認識し、最終的にお互いを刺し合う。
スカリーは見知らぬ部屋のベッドで目を覚ます。暗闇の中で背後に暗い影が迫っている。彼女はその存在を感じ、ベッドから出ようと奮闘する。彼女は自分が今いる謎の家の中を探索し、銃を構えながら謎の人影を追う。結局すべては夢だった。モルダーはその体験を一種の金縛りであると推測する。彼女はモルダーの机の上にキメラ船の写真を見つけたとき、金縛りの記憶の中で、キメラ号の模型が入ったスノードームを手に取っていたのを思い出す。
モルダーとスカリーは埠頭に着き、コスタ刑事 (ルイス・フェレイラ) と会う。犯行現場であるキメラ船で、スカリーはブリッジのガラス窓に少女の一人が残した血の手形を見つけ、誰が通報したのかコスタ刑事に尋ねる。コスタは、パニックに陥った男性からの匿名の 911 通報だったと伝える。その後スカリーは移動式通路の 1 つから彼らをじっと観察している男性に注目する。コスタは被害者たちが「グーリーを見つけた?」と尋ねたとスカリー達に伝える。スカリーが謎の男がそこにいるか確認しようと振り向くと、彼はもういなくなっていた。
モルダーとスカリーは喫茶店に座ってインターネットをチェックしている。彼らはGhouli.netというサイトに行きつく。二人のティーンエイジャーが斬殺された事件についての捜査が始まり、二人とも事件のこと以外に、ボーイフレンドのジャクソン・ヴァン・デ・カンプについて語る。スカリーはその名字が行方不明の息子の養父母ではないかと考える。
スカリーとモルダーがヴァン・デ・カンプ家に到着した途端、二発の銃声が聞こえ、彼らは家の中に駆け込む。1階の床に男性と女性の遺体が横たわっている。三発目の銃声が二階から聞こえ、スカリーは二階に上がり血まみれのジャクソン・ヴァン・デ・カンプの遺体を発見する。
医療班が呼ばれて家を調べる。状況は両親を銃で殺したジャクソンが二階で自殺したと思われる。スカリーとモルダーはジャクソンの部屋でピーター・ウォン著の「ナンパ師 羊の皮をかぶった狼の回想録」という本を見つける。モルダーが窓のほうを向くと、警官と救急隊員が慌てて駆けつけているのが見える。スカリーは棚に『オズの魔法使い』の有名なフレーズ「私たちはもうカンザスにはいない」とプリントされているスノードームを見つける。
スカリーはジャクソン・ヴァン・デ・カンプの遺体が安置されている小さな遺体置き場に入る。スカリーはDNA検査のために自分の口内粘膜のサンプルを採取すると、乾いた血で覆われた少年の遺体袋をそっと開く。スカリーはジャクソンのそばに座り、彼が自分の息子なのかどうかわからないまま彼にいろいろと話しかけ、「結局守れなかった。ごめんなさい」と謝る。モルダーはスカリーを部屋から連れ出す。彼らが部屋を出てドアがカチッと閉まると、遺体袋のジッパーがゆっくりと開く。死んでいたはずのジャクソンは起き上がり、部屋から逃げ出す。
スカリーは待合室のソファに横たわり、またも金縛りに遭う。橋、上空に浮かぶUFO、血まみれのエイリアンの手が頭に浮かぶ。スカリーはハリス博士に起こされ、遺体をどこへやったのかと尋ねられる。捜査官たちはジャクソンの遺体が消えたことに気づく。
スカリーが病院を出たところで、見知らぬ男とぶつかる。物腰の柔らかなその男はピーター・ウォンの顔をしており、ぶつかったことを謝る。そして少し話をした後、スカリーに「あきらめずに大局を見て」という言葉を残して去っていく。
モルダーとスカリーはジャクソンの部屋のPCを調べ、彼が国防総省にハッキングをかけてクロスロード計画のファイルを入手していたことが判明する。そこへ国防総省の捜査官がやってきて、モルダーたちを強制退去させる。モルダーはわざとPCの横にあったコップを倒し、PCを水浸しにする。
スカリーはジャクソンのセラピストと面会し、彼の状態について話しを聞く。セラピストは、ジャクソンが具体的で詳細な幻覚が見えると訴えていたと話す。スカリーは彼女に自分が見たパンデミックで荒廃した未来のビジョンを話し、セラピストは「なぜご存じなの?」と驚く。
スカリーはモルダーに、自分が見た幻覚は息子から送られたビジョンだったと話す。モルダーはジャクソンには代替現実を見せる能力があると推測する。犯人たちは両親を殺害したのちジャクソンも始末する予定だったが、モルダーたちの登場によってやむなく逃げ、命が狙われていると知ったジャクソンは自分が死んだという代替現実をモルダーたちに見せていた。
モルダーはキメラ号でスキナーと会い、捜査をやめるよう忠告される。スキナーは宇宙人とのハイブリッドをつくることを目的としたマツオ・マサモト博士のクロスロード計画について説明し、国防総省案件なので手を引くようにモルダーに言う。モルダーはジャクソンのDNAがスカリーのDNAと一致したことをスキナーに話し、立ち去る。スキナーは途方に暮れてその場に立ち尽くす。
スカリーとモルダーは、ウィリアムは2人の少女が治療を受けている病院にいると想定する。病院でジャクソンはブリアナに、自分を追ってくる人がいるので隠れていたと説明する。彼は、グーリーは存在せず、自分が「でっち上げた」ものだと明かす。モルダーとスカリーは病院に到着し、コスタと会い、ジャクソンが生きていると告げられる。サラがコスタにジャクソンとブリアナがキスしている写真を添付したテキストを送っていたことが判明する。ジャクソンは慌てて部屋から出るが、国防総省の1人に邪魔される。2人の国防総省職員は彼をナースセンターまで追いかける。ウィリアムは一人の職員にスカリーの姿を投影し、国防総省の1人と対面させて相撃ちさせる。モルダーとスカリーは床に倒れている国防総省職員2人を見つける。ジャクソンは怯えた看護師に姿を変えてその場から逃げる。
翌日、スカリーは郊外のガソリンスタンドのすぐ外に風車があるのを見つける。モルダーはトイレに行き、スカリーはまたピーター・ウォンに出くわす。2人は会話を交わし、ウォンは彼女のことをもっとよく知りたいと言う。「信念を持たぬものは全てに流される」という言葉を残し、ウォンは車で走り去る。トイレから戻ってきたモルダーに「誰だ?」と聞かれて、スカリーはようやくウィリアムの部屋にあった小説の著者の顔だと気づく。
モルダーとスカリーはガソリンスタンドの防犯ビデオを見せるよう店員に要求する。ビデオ映像の中ではピーター・ウォンではなくウィリアムがスカリーと会話していた。モルダーがスカリーを抱きしめるとスカリーは微笑み、2人は息子が生きていることに安堵する。
※モルダーが言及するヒプナゴギア(hypnagogia)とは、眠り始めて最初の深い眠りに落ち始める半覚醒状態のこと。脳内において創造性と見識を司る部分が活性化されており、創造力の向上や新しい発想が生まれるといわれている。
エピソード6:Kitten(子猫)
1969 年、ベトナム戦争中、ウォルター スキナーとジョン “キトゥン” ジェームズを含む米海兵隊の小隊は、MK-NAOMI と記された木箱を集合場所まで護衛する任務を負う。着陸地点に到着すると敵の攻撃を受け、一団の民間人とともに小屋に避難せざるを得なくなる。スキナーが負傷兵を助けるために引き返したとき、木箱は銃撃で損傷し、キトゥンは黄色いガスにさらされる。小屋に戻ると、スキナーはキトゥンが民間人を殺害したことを知る。
2018年、モルダーとスカリーはFBI長官アルヴィン・カーシュの前に呼び出され、スキナーの居場所について尋問される。スキナーは理由もなく姿を消しており、モルダーとスカリーは彼のアパートを捜査する。そこで彼らは、スキナーに切断された人間の耳が郵送されていたのを発見する。モルダーは、その小包がケンタッキー州マッドリックという町から送られてきたものだと特定する。町に向かう途中、スカリーはスキナーの軍歴と彼の小隊の記録が最高機密に分類されていることに気づく。
マッド リックに到着したモルダーとスカリーは、遺体安置所で耳の欠けた遺体を発見する。モルダーは死因がベトナム戦争時代のブービートラップであるパンジ杭であると特定する一方、スカリーは地元の保安官に、近くの森に怪物が潜んでいるという主張や、説明もなく歯が抜けている人がいるという主張など、町を巻き込む集団ヒステリーについて質問する。
翌日、もう一人のベトナム帰還兵バンジョーの遺体がパンジの穴の底で発見される。付近のカメラは、おそらくその地域のシカを監視するために使われていたもので、バンジョーの死を記録しており、バンジョーが穴に落ちた直後にスキナーが穴に近づいているのが映っていた。モルダーとスカリーは、スキナーが自分たちの上司であることを認めたため地元当局の支持を失い、彼が無実であると保安官を説得することもできなかった。モルダーはビデオを見続け、森の中にフードとマントをまとった人物が潜んでいるのを目にする。それは町を恐怖に陥れている「怪物」だったが、モルダーはすぐにそれがコスチュームを着た人間だと一蹴する。
スキナーは、キトゥンの息子デイビー・ジェームズ(ハーレイ・ジョエル・オスメント)の狩猟小屋に近づく。デイビーは、スキナーがキトゥンを助けなかったと非難する。キトゥンは、MK-NAOMI にさらされた後、ますます暴力的になり、帰国後軍法会議にかけられた。彼はマッド・リック郊外の精神病院に収容され、スキナーの証言が彼を投獄する鍵となった。デイビーは、MK-NAOMI にさらされた兵士全員が同じ施設に送られ、そこで実験が続けられたことを明かし、キトゥンの最初の曝露は政府によって画策されたことを示唆している。当初は、兵士の恐怖心を攻撃性に向けることで兵士をより効率的な戦争兵器に変える試みであったが、MK-NAOMI の範囲は拡大され、人々の精神を制御する手段となった。
スキナーはデイビーにキトゥンのところに連れて行ってほしいと頼む。デイビーはキトゥンが施設を出て首を吊った木へと彼を導く。キトゥンの死体に近づくと、スキナーは別のパンジ穴に落ち、杭に刺される。デイビーは彼を置き去りにし、モルダーとスカリーがその地域のベトナム帰還兵を調べてから到着する。デイビーはスキナーのことを知らないと言い、MK-ナオミを使って人口をコントロールしようとする政府の陰謀についてわめき始める。MK-ナオミはMK-ウルトラの完成版だと主張する。捜査官たちは表面上は彼の説明を受け入れて立ち去るが、モルダーはキトゥンとスキナーが自分の小屋にいる写真に気づき、デイビーを疑う。モルダーは引き返して小屋を調べ、ビデオに映っていた「モンスター」の衣装を見つける。その地域を捜索すると、パンジ穴にいるスキナーにたどり着く。デイビーは彼らを待ち伏せしようとするが、救出に来たスカリーに背後から撃たれる。
モルダーとスカリーはスキナーに、出世できないのは自分たちのせいだというカーシュの主張について尋ねる。スキナーは、ベトナムでのキトゥンとMK-NAOMIとの経験で政府への信頼が揺らいだことを認めるが、彼らがどこへ行っても真実を追及する姿勢で人々への信頼を取り戻した。彼はワシントンに戻り、自分の地位を利用して政府の権力濫用と戦うことを決意する。スキナーが去るとき、彼の歯が1本抜け落ちる。これは、歯が抜けている町民たちと同じように、彼もMK-NAOMIにさらされていたことを示唆している。
エピローグでは、農薬散布機が畑に黄色いガスを散布する様子が映し出され、政府の陰謀に関するデイビーの警告がナレーションで繰り返される。
※MKナオミ計画は1950年代から1970年代にかけて実施された国防総省とCIAの共同研究プログラム。生物化学兵器の開発が主な目的。
※ジョン&デイビー・ジェームスを演じているのは『シックスセンス』『AI』等に出演して天才子役として有名になったハーレイ・ジョエル・オスメント。
エピソード7:Rm9sbG93ZXJz(フォロワー)
冒頭は過去映像。2016年3月23日に機械学習チャットボットがTwitterで公開された。ネット上の言葉を学習しながら非常に急速に進化したが、ネットにあふれる悪い言葉や思想を吸収し続けたことにより悪意のある発言が増え、最終的にチャットボットは停止を余儀なくされた。すべての人間への警告で映像は終わる。
スカリーとモルダーは、全自動の寿司店「フォロワー」にいる。画面で料理を選んだ後、2 人はスマート デバイスの操作に没頭する。スカリーが寿司を楽しんでいる間、モルダーは間違った料理、ブロブフィッシュを受け取る。返品しようとした彼が厨房へ行くと、そこには調理ロボットたちしかいない。
モルダーは早々に会計をしようとするが、チップを渡すのを拒否したためかクレジットカードがスロットから取り出せない。癇癪を起してテーブルをたたいたのでアラームが鳴り、レストランが閉店し始める。スカリーは箸を使ってドアを無理やり開け、2 人は外に出る。モルダーはカードがまだそこにあることに気づくが、取り戻すのを諦める。
レストランの外で、スカリーはスマート デバイスから「ウィップス」(自動タクシー サービス) が到着したことを知らされる。モルダーに別れを告げる前にドアを閉められて、スカリーは走り去る。モルダーは自分の車に乗り込み、自宅へと向かう。2 人ともスマホに頻繁に届く寿司店からのレビュー依頼にうんざりする。
スカリーは自宅に到着し、すぐにモルダーに電話しようとするが、電話がつながらない。家に入るとホームアラームシステムが鳴りやまず、スカリーのコードも拒否する。スカリーはサポートセンターに誤報を通報しなければならず、それに250ドルの請求を受けて辟易する。
就寝時、ヘアクリームの空のチューブをゴミ箱に捨てた数秒後に、ヘアクリームを買い足すよう勧めるメッセージが届き、スカリーは不審に思う。メッセージを無視しようとしたスカリーは、誤ってガラス容器を地面に落としてしまい、割れてしまう。掃除をしていたらドアベルが鳴って中断され、スカリーはドローンで運ばれてきた床掃除ロボットが玄関前にいるのを発見する。「ZUEMZ 9000」は「お手伝いに来ました」と告げ、スカリーはモルダーからの贈り物だと思い、床に置いて電源を入れる。結局、スカリーはロボットにうんざりし、梱包に戻す。 ZUEMZ 9000 を返品するためにカスタマー サポートに連絡を取ろうとしたが、自動音声アナウンスが言うことを聞かず失敗する。そのうちにすべての機器が故障し始め、自動制御の暖炉の炎が消えるが、ガスはまだ出ている。ろうそくに火をつけようとしたが、マッチが折れて地面に落ち、火が消えてしまう。
一方、モルダーは車の GPSナビどおりに運転していたのに、なぜか寿司レストランに戻ってきてしまう。赤いランプを光らせたレストランはまだ怒っているらしく、彼はクレジットカードを回収できない。GPSナビを使うのをやめて地図を手に取り、自分で自宅への道順をたどる。家に着くと彼は銀行に電話し、「盗まれた」クレジットカードを報告した。モルダーは家の外をチェックし、目の前を飛んでいる中型のドローンに気付いた。最初は子供のおもちゃだと無視していたが、さらに迷惑なスパイ行為を受けた後、野球のバットをつかんでドアの前でドローンを破壊した。3 機の大型ドローンが現れ、残骸を回収した。銀行と連絡を取ろうとしている (Web サイトが彼のログイン認証情報を拒否) が、レストランがまたもや彼から情報を得ようとし、困惑する。突然、自宅に小型ドローンが集まっていることに気づいたモルダーは、車で逃げ出す。
彼はスカリーの家まで車で向かう。スカリーは暖炉から漏れるガスの臭いに気づき始めた。ZUEMZ 9000 が地面に転がってマッチに火をつけようとしたその時、スカリーは火かき棒でガラスのドアを叩き割って家から逃げ出す。爆発で二人とも草むらに投げ出され、モルダーの車まで走る。二人の携帯電話は両方とも、911 への電話など、まだ協力を拒否する。二人はオフィスに行こうとするが、再びドローンに追いかけられる。ドローンを振り払うことができないので、追跡可能な電子機器をすべて捨ててどこかの工場に逃げ込む。工場内ではドローンに代わり四足歩行ロボットが追跡してくる。銃撃され、重くて機敏な産業用ロボットと対峙した後、モルダーは最終的に抵抗をあきらめ、寿司レストランに 10% のチップを渡す。すると機械は撤退していき、すべてが「通常」に戻る。
エピソードの最後のシーン。モルダーとスカリーは人間が切り盛りしているダイナーで一緒に昼食を食べている。紙幣で支払いをしながらもスマートフォンに集中している。ふと思い立ったスカリーは、スマートフォンを脇に置き、モルダーの手にそっと触る。それに対してモルダーはスマートフォンの画面を裏返してテーブルに置き、2人は手を握ったまま顔を合わせる。
※冒頭に流れるチャットボットのニュースの元はMicrosoftが2016年に1日だけ公開したAIチャットボット「Tay」。スタート直後から脆弱性を突いた組織的攻撃を受け、SNSで差別的・攻撃的な発言を連発するようになったため24時間でツイート休止に追い込まれた。
エピソード8:Familiar(親しき者)
コネチカット州イーストウッドで、アンドリューという名の少年が「ミスター・チャックルティース」のおもちゃで遊びながら、キャッチーな子供向けアニメの歌を歌っている。彼の母親は別の人物から電話を受け、息子から目を離す。少年は公園の周りの森の中をうろうろしているミスター・チャックルティースを目にする。彼は母親に、木の後ろにチャックルティースが隠れていると教えるが、女性は電話をかけてきた人との口論に夢中。彼女が振り返ると、アンドリューはいない。彼女は息子の名前を叫び続けるが返事はかえってこなかった。
その頃、アンドリューは森の奥深くでミスター・チャックルティースを呼んでいる。少年は森のあちこちで彼を追いかけますが、目に見えない危険が恐ろしいスピードで少年に迫ってくる。
数時間後、警官らが森で少年を捜索している。そのうちの 1 人はアンドリューの父親、リック・エガース警官だった。ウェントワース警官は地面に何かを見つけるが、それはアンドリューの死体であることが判明する。彼の父親は息子に会いに急いで向かうが、他の警官に止められる。
スカリーは森の中で事件記録の書類を調べると、少年が凶暴な手口で殺されたことがわかる。スカリーは、検死官がアンドリューの気管と脊椎が潰れていたことを発見したと記す。ストロングは、コヨーテとオオカミのハイブリッドであるコイウルフという新しい捕食動物がいると言う。モルダーは殺人事件の捜査を管轄していると説明する。ストロングはびっくりしてウェントワースと顔を見合わせ、FBI が殺人事件だと考えていることにショックを受ける。
アンドリューの遺体は検死のため運ばれる。スカリーは首の損傷はおそらく揺さぶられたことによると観察する。モルダーはアンドリューの足首に塩のようなものが付着しているのに気づく。一方、町中の人々がアンドリューの葬儀に集まっていた。ダイアンは、アンドリューの遺体がそこにあるのに葬儀さえできないという事実にショックを受ける。
ストロング家では、アンナはモルダーとエミリーと一緒に座り、子供から情報を得ようとする。アンナは母親にオレンジジュースを頼み、モルダーはリビングルームにあった「イーストウッドの魔女の魔導書」という本を見ている。そのうちにテレビがミスター・チャックルティースの歌を大音量で流し始める。エミリーは振り返り、チャックルティースが森にいたことを話し始める。
モルダーたちが警察署に戻るとリック・エガースが性犯罪者データベースを検索していて、メルビン・ピーターを見つける。スカリーは署長のオフィスに入り、調査結果を報告する。彼女と署長がエガース氏を探しに行くと、ウェントワースに出くわす。ウェントワースは、リックが急いで署を出て行くのを見たと言う。彼らは外に出て、エガースがパトカーを飛ばして走り去るのを見る。ストロングとスカリーは別のパトカーに乗り、エガースを追いかける。エガースはメルビンの家に到着し、ドアを蹴破り、銃を撃ち、彼を呼び出す。ストロングとスカリーは家に入り、ピーターが家にいないことに気付く。モルダーが現れ、スカリーと一緒に家を捜索する。スカリーは、子供の遊び場やパーティーでピエロの格好をして映っている男の写真を多数見つける。モルダーがクローゼットのドアを開けると、小さな檻の中で猿がガラガラと音を立てているのが目に入る。モルダーは飛び退くが、クローゼットの中には衣装やピエロの靴、ミスター・チャックルティースのマスクなど、多くのものが入っている。
ストロング家に戻ると、エミリーはテレビを見続け、その間アンナは昼食の準備をしていた。エミリーは窓の外の庭に立っている「ビブルティグル」を見つける。アンナはテレビを消すようにエミリーに呼びかけ、エミリーがいなくなっていることに気づく。数時間後、モルダーとスカリーはエミリーの死体を発見する。エミリーはアンドリューと同じ方法で殺されていた。モルダーは死体の周囲に塩の輪があることに気づき、魔術が使われたことを示唆する。
一方、公園ではピーターが近所に戻ってきた。パトカーが彼の後ろに止まり、エガース警官が降りてくる。警官はピーターに駆け寄ると戸惑っているピーターを車から引きずり出し、アンドリューを殺したと非難する。
森の中でモルダーはストロングに詰め寄る。モルダーは誰かが魔術を実践していて、ストロングはそれがアンドリューの殺人と関係していることを知っていて隠すために事件を終わらせたのだと考えている。ストロングは自分がエガースの妻ダイアンと浮気していたことを認める。
公園ではピーターを激しく殴り倒しているエガースの周りに群衆が集まっている。エガースは、ピーターが息子を殺したと叫び続けるが、ピーターは誰も殺していないと主張して抗弁する。ウェントワースはエガースに止めるよう言うが、エガースは拒否し、周囲の人々はエガースに殴り続けるよう煽る。他の警官がようやく到着し、群衆を解散させようとするが、まだ混乱が続いている。そこでモルダーが空に向かって銃を発砲する。エガースはピーターから引き離される。モルダーは銃をしまう。その時突然エガースが拳銃を抜き、ピーターの頭を撃つ。
裁判官は、明らかに殺人であるにもかかわらず、エガースを保釈した。エガース家の自宅で妻のダイアンが酒をグラスに注いでいると、リックが家に帰ってくる。リックは妻の浮気を知っており、彼女に激高する。ダイアンは家を出て高速道路まで運転したが、そこでアンドリューの幽霊にぶつかりそうになり、車が横転して死亡する。
一方、リックはストロングの家に車で向かう。彼はドアを蹴破り、署長を呼び、アンナに動かないように叫び、これは自分と浮気夫の問題だと告げる。リックは家の中を走り回っているミスター・チャックルティースの姿を見つける。リビングではひとりでにテレビがつき、気味の悪いアニメを流しはじめる。エガースがチャックルティースを追いかけて家の前まで行くと、ストロングが銃を向けている。
モルダーとスカリーが到着すると、エガース警官が死んでいた。モルダーとスカリーは公園に到着し、懐中電灯を持って森に向かう。ストロングはアンナを探して木々の奥深くへと進んでいく。彼は森の中で塩の輪の中にいるアンナを見つけるが、背後からヘルハウンドに襲いかかられ、殺されてしまう。モルダーとスカリーはアンナを止めるために駆けつけるが、ヘルハウンドも彼らの後ろにいた。そして突然アンナが炎に包まれて死ぬ。
数時間後、警官たちは再び公園に集まり、アナとストロングの死にまつわる出来事を整理する。スカリーはウェントワースに本を手渡し、なぜか燃えなかったと説明する。スカリーは何か別のことが起こるのではないかと恐れ、モルダーに町から立ち去ろうと言う。彼らが車で去る途中、アンドリューが最後に遊んだメリーゴーランドがゆっくりとひとりでに回り始める。
※コネチカット州にはアメリカで最初に魔女裁判が行われたという歴史がある。(ハートフォード魔女裁判)
※ビブルティグルはイギリスBBCの子供向け番組『テレタビーズ』(Teletubbies)に登場するキャラクターがモデル。
エピソード9:Nothing Lasts Forever(必衰)
ブロンクスの仮設手術室で、2人の外科医が男性の臓器を摘出するが、その過程で男性は死亡する。手術はジュリエットという若い女性によって中断される。彼女は外科医たちの胸に金属の釘を打ち込み、彼らを殺害する。彼女は臓器のほとんどをなんとか確保し、近くの病院に届け、「復讐は私がする」というメッセージを残す。
フォックス・モルダーとダナ・スカリーは、儀式殺人だったことを示す証拠からこの事件に引きつけられる。警察はモルダーの推測を退け、殺人は臓器窃盗団に関連していると考え、外科医の一人が医師免許を剥奪されており、ロシアンマフィアの仲間だったと指摘する。
スカリーは合法的な臓器提供の記録を確認し、モルダーはダークウェブでの違法販売の痕跡を探すが、どちらも事件との関連は見あたらない。モルダーは、殺人者のメッセージと神の復讐に関する賛美歌を結び付け、凶器の特徴的な形に一致する鉄格子が教会の柵から引き抜かれたものであることに気づく。モルダーは、殺人が悪魔崇拝ではなく神の怒りによって引き起こされたものである可能性を考え始める。
スカリーとモルダーは教会での司祭との会話でジュリエットにたどり着く。彼女は妹のオリビアがカルト教団に入ったと話す。一方、失われた臓器は隠遁生活を送るテレビスター、バーバラ・ボーモントとそのパートナー、ランドルフ・ルヴェニスの家に運ばれる。ボーモントは老化を遅らせるために人間の臓器を食べるカルト教団を結成しており、85歳であるにもかかわらず、30歳に見える。その効果は一時的なもので、ルヴェニスは外科手術で自分自身を他者と結合させ、寄生して彼らを食べて年齢を逆転させる。2人は一緒に信者に臓器を与えており、バーバラに結合させて永遠の若さを与えようと計画している。しかし、盗んだ臓器ではカルト教団を養うのに十分ではなく、緊張が生じる。ルヴェニスが病院から残りの臓器を盗みに行くと、カルト信者の1人が他の信者を支えるために自分を生贄に捧げる。その信者は自分を刺した後、生きたまま食べられてしまう。
盗まれた臓器が移植に使われることは決してないと分かっているモルダーとスカリーは、ルヴェニスが回収できるように心臓に追跡装置を埋め込む手配をする。彼らは信号を追ってボーモントの家に行き、ジュリエットの存在に気づかずに侵入を試みる。宿主だったケイラをバーバラに捧げたルヴェニスは一人では老化が進むため、新しい宿主であるオリビアに取り付く手術を受ける。家の中に入ると、エージェントたちはボーモントの信奉者たちの抵抗にあい、スカリーはエレベーターシャフトに突き落とされてしまう。モルダーはジュリエットに助けられ、ジュリエットはバーバラ・ボーモントの胸に金属の杭を打ち込んで殺害する。バーバラの死は信奉者たちの意気消沈を招く。モルダーが地下室でスカリーの居場所を知ろうとすると、オリビアと結合したことにより、はるかに若々しく力も強くなったルヴェニスと対峙する。不死を手に入れたと豪語するルヴェニスだが、ジュリエットは彼を殺す。しかしルベニスと共に死ぬ運命にあったにもかかわらず、オリビアはカルト教団で幸せだったと主張する。ジュリエットはモルダーに降伏する。エレベーターシャフトから落ちたスカリーは、長年カルト教団が貯めたゴミの上に落ちたため無事だった。
その後、モルダーとスカリーは教会に行く。モルダーは信仰の力を認めるが、自分が無神論者であるのは信仰が欠如しているからではなく、信仰を必要としないからだと主張する。
エピソード10:My Struggle IV(闘争 Part.4)
「グーリー」の事件の後、ウィリアムはシガレット・スモーキング・マンの計略のキーマンとして政府エージェントから逃亡することになる。彼は辛い幼少時代を振り返り、シガレット・スモーキング・マンを探し出して彼の本性についての真実を知ろうと決意する。
モルダーとスカリーはモニカ・レイエスからの電話で、ウィリアムが拘留されメリーランド州の政府倉庫に連行されていることを知る。ウィリアムとの霊的つながりを通じて未来のビジョンを見ていたスカリーは、ウィリアムはそこにいないだろうと予言する。モルダーは建物に侵入するが、尋問する前に 捜査官とミスターYを殺さざるを得なくなる。ウィリアムの痕跡は見つからない。
スカリーは、テネシー州北東部に宝くじ当選者の集団がいることを突き止め、それがウィリアムの存在による副作用だと確信する。モルダーは足跡をたどるが、彼自身も政府エージェントに追われる。ウィリアムはトラック運転手に同乗するが、自分の能力で彼を怖がらせる。モルダーは苛立ちながら諦め、ウィリアムがノーフォークに向かっていると予想する。一方、ウィリアムはモルダーを追っていたエージェントに拾われる。
サラ・ターナーとブリアナ・ステイプルトンと彼女の友人マディの助けを借りて、モルダーはついにノーフォークのホテルでウィリアムの居場所を突き止める。モルダーはウィリアムに、エリカ・プライスが率いる部隊がエージェントの車を見つける間、自分と話をするよう説得する。エージェントはウィリアムにバラバラにされて死んでいた。プライスの部隊はウィリアムのホテルの部屋に押し寄せ、彼を逮捕しようとする。ウィリアムは彼らに能力を向け、彼らを爆発させる。ウィリアムは制御を失い、モルダーを殺しそうになるが、落ち着きを取り戻し、マスコミがホテルに押し寄せる中、現場から逃げ出す。
モルダーに時間を稼がせるため、スカリーはオンライン ウェブキャスターのタッド オマリーに連絡を取り、ホテルでの事件はエイリアンのウイルスから開発された人工病原体を放出するプロジェクトの一環であると主張する。モルダーがその情報源として挙げられ、カーシュ局長はウォルター スキナーに X ファイルを完全に閉鎖し、モルダーとスカリーを職務から解くよう命じる。スカリーはこれまでとは別のビジョン、モルダーの死の瞬間を幻視し、スキナーに彼を救うのを手伝ってくれるよう懇願する。
モルダーはウィリアムを海岸沿いの廃工場まで追う。スカリーがすぐに到着し、モルダーはウィリアムを探すのは諦めた方がいいと提案する。ウィリアムは見つかりたくないし、守ることもできないからだ。スカリーは引き下がらず、モルダーに詳細を問い詰める。そのとき本物のモルダーが到着する。スカリーが話したモルダーは変装したウィリアムだった。2人が工場内を追っていると、スキナーはレイエスとタバコを吸う男に追われていることに気づく。タバコを吸う男は車にスキナーをはね飛ばそうとする。スキナーはレイエスを射殺し、車から逃げようとするが、最終的に車の下敷きになった。
スモーキング マンは、埠頭の先でモルダーと対峙する。モルダーはスモーキングマンを嘲り、挑発する。スモーキング マンは彼の頭を撃ち、彼は水に落ちる。スカリーが見たモルダーの死の光景と同じように。
そこへモルダーがもう一人現れ、スモーキング マンに向けて銃を連射する。スモーキングマンは自分が殺したモルダーがウィリアムだったことに気づく。彼は水に落ちてそのまま流れていく。
その後、モルダーとスカリーは互いに慰め合う。スカリーは、ウィリアムの母親ではなかったことを認め、ウィリアムは自分の体内に埋め込まれた実験体だったと説明する。ウィリアムの親子関係について真実を知ったモルダーはショックを受ける。が、その時スカリーがモルダーの子供を妊娠していると明かす。スカリーの体ではそれはあり得ないことのはずだった。2人は奇跡に喜び、抱き合う。
ちょうどその頃、撃たれて水に落ちたウィリアムは意識を吹き返し、水面へ浮上し、顔を出す。その頭には銃痕があるが、彼は生きていた。
※ブリアナの友人マディを演じているのはデイビッド・ドゥカブニーの実娘ウェスト・ドゥカブニー。
『Xファイル シーズン11』の感想
ミニシリーズとして復活した『Xファイル』。その集大成であるシーズン11はシリアス展開が少なく、かなり遊び的要素が入っていたので気楽に観られました。
特にエピソード4「失われた記憶」などはマンデラエフェクトを取り入れた完全なお遊び回ですが、数あるXファイルの作品の中でも名作の部類に入ると思います。
トラウマになりそうなほど印象的なのがエピソード8「Familiar(親しき者)」に登場するチャックルティースとビブルティグル。特にビブルティグルは病的にヤバい感じがすごい。
Xファイルシリーズの集大成として、無難にまとめたという印象があります。いろいろとひどい目にあったモルダーとスカリーに幸せな結末が待っている予感と、一番不幸な存在ともいえるウィリアムが撃たれても死なない”不死の存在”として残ったラストは個人的には好きです。